扇絵を屏風に貼って小画面を嗜む趣向は室町からと言われている。
本図のような構成は「宗達派」の作品が主に知られているところだが、
この画風は琳派とは異なる点があり、大きく表現された橋やその王朝風人物は
十七世紀初頭、江戸の風俗画によく登場する扇面画といえる。
また、雲や松、各扇面に施されているのは平安時代中期から伝わる金箔、切箔、砂子といった
「金彩」の技法が多様され、優美な情趣を一層引き立てたすばらしい作品である。
<六曲一隻 紙本金地 十七世紀初頭>
今回はこのすばらしい屏風を精好(せいごう)という張り、艶のある上品な生地で染帯に仕上げた。
<精好濃紺地扇絵染帯>
いかがでしょうか、この生地特有の艶のある染上がり。
扇面には雲、松、橋、そして王朝人物と当時の扇絵らしい表情を色濃く伝えられたと自負する。
今回の「テーマ」は平安時代から始まり、桃山文化でその魅力が開花した「金彩」、
特に室町・桃山から江戸初期にわたりその技法や表現力は代表となる摺箔、
そして切箔、砂子、金銀箔など、多種多様な表現で刺繍にはない煌びやかな世界を作り出している。
江戸の風俗画を主に「金彩」であしらったこの染帯、
どうぞ一度ご覧ください。