アテは当てにならない! ので…
機には大小いろいろな部品が付いていて、それぞれ欠かすことのできない役割を持っています。
その中には「象の鼻」「サル」「メガラス」「おとこ」と呼ばれるものもあったり…。
その名称もバラエティーに富んでいます!
その中でも今回は「アテ」についてご紹介したいと思います。
「アテ」は織物の打ち込みの密度を一定に保つためのもので、特に密度が粗いものを織る時に使います。
唐織の様にしっかりと地緯を打ち込む織物には使いません。
緯糸の密度が粗い(若い)ものを自分の手加減だけで織ろうとすると、紋が伸びたり縮んだり、段の様にスジが入ったように見えたり…加減しようとするので、織るスピードも遅くなってしまい、難しいのです。
そんな時はアテの出番です。
歯車を使って織り上がっていく生地を一定に巻き取りながら織り進めていくのですが、↓
どれだけ巻き取っていくのかをきめるのが、こちらの溝で、この溝の位置で巻き取る長さを調整しています。
筬で緯糸を打ち込むものを「かまち」といいますが、そのかまちをアテに当たるところまでしか打ち込まない事で、緯糸が入り過ぎず、意図した密度で織ることができるのです。
文字通り、アテにかまちを当てながら織っていくのです。
↓
が、しかし!アテは当てにならないのです!!
織物はお天気にも左右されます。
湿度の多い日と乾燥している日では加減が違います。
アテを使って織っていても、いつのまにか巻き取られる間隔が変わってきて、ヨコ密度が違ってくることがあります。
織り密度が変わってきていないか、織り前を見ながら、巻き取る長さを微調整しつつ丁度良い具合をキープし進めてきます。
淡々とした繰り返しの仕事に見えますが、
機の調子を感じ取り、こちらが機に寄り添いながら織り進めます。
同じ織物を織っても、織り手が変まわれば織り上がりも変わります。
織り手が機とバランスを取りながら織り上げていくので、工業製品の様に同じ仕上がりにはならないのです。
帯一本一本に織り手と機との関わりの痕跡があります。
安井