ぎをん齋藤
ぎをん齋藤

ブログ

技法として「友禅染」の偉大さ

最近「摺箔」の事ばかり考えていると、逆に「友禅染」の技法がいかに優れているか再確認する結果になった。

「友禅染」は江戸中期、18世紀の初頭に完成された染め技法とされている。その大成者が「宮崎友禅斎」とされているが確かな証拠はない。

その特徴はきもの全面にのびのびと図柄を描き「糊」を使って地色が染み込まないよう防染するという技術が肝で、これで全面に及ぶ大柄のきものが容易に作ることが可能になった。色挿しに「ぼかし染め」を使えばグラデーション表現が可能となり、一幅の掛け軸のごとく染め上げることが可能となった。

正に革命的である。それ以後はきものと言えば「友禅染」とされ、きもの業界の主役として現在もその影響下にあるといえる。

ただその「友禅染」が魅力を失いつつある。その訳は「絵」を描ける職人がいなくなったからである。「今でも魅力あるじゃないか」とおっしゃるかもしれないが、あれは「絵」ではなく直線と曲線を組み合わせた単なる「図形」でしかない。

「絵」にはデッサンという下地と写実を超えた精神性が必要だが今の「友禅染」にはそれが欠けたものが多い。

「ぎをん齋藤」では30年間私と一緒に絵を勉強してきた絵師の宮崎君がいる。若い時とは違って枯れた筆致で巧みに花鳥風月を描き分ける。次代に友禅染を継承するには彼のような良い絵描きを育てることは必須である。