ぎをん齋藤
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ブログ

齋藤貞一郎
『ぎをん齋藤』の主人

齋藤貞一郎

ぎをん齋藤のきものや帯のお品物をご紹介する中で、
物づくりのこだわりを綴っております。
定番商品の御所解をはじめ、齋藤織物の袋帯をご紹介したり、
また、きものと帯のコーディネートを更新して参ります。

祇園祭

今日の京都は祇園祭の熱気と異常なほどの高温で燃え上がっている。

本番は17日と24日の山鉾巡行だが、祭自体の神事は7月1日から既に始まっている。

山鉾建造は江戸時代、裕福であった町衆と言われる商人達の財力で始まった経緯があり、歓楽街の祇園を中心とする川東(鴨川の東側)には存在しない。私もレッキとした八坂神社(祇園さんと呼んでいる)の氏子だが、この辺りは神社の神輿を担ぐ人達の地域と決められ、昔から祇園さんに鈴の緒を奉納する歴史がある。

 

いまでも鈴の緒につけられた8角の桐枠には私の名前が刻まれ、初詣など多くの人で溢れる境内で、私の名前が刻まれた鈴緒を元気よく振るのであっという間に名前が薄くなってしまう(笑)。私が幼少の頃は祇園祭というと親類縁者が家に集まり宴会のような事をした記憶はあるが先代の兄弟が皆、亡くなり、私が一人っ子であったせいで祭りに人が来るようなことはなくなった。今では他府県のお客様が祇園祭を楽しむついでに来店されることも多く、社員達は休日出勤することもしばしばある。

 

京都商人の心意気で始まったこの祭りを維持、継続する為に行政も鉾町も一所懸命に努力していると聞く。

「継続は力なり」、末長く続く事を願っている。

出来が良かった新「無双」きもの

6月に銀座で催した「夏のはんなり展」の為に考案した「無双」きものが仕立て上がり、お客様にお送りする前に仕上がりを確認した。

思いのほか出来が良いのに満足。この生地はテレビ番組にヒントを得て気心の知れたYさんに依頼して織り上げた極細の絹糸を用いた薄絹である。いわゆる「ゴース」に似た生地感は一目見た時から「無双」にピッタリだと直感した。

 

無双とは6月〜9月まで着られる薄物きものの一種で、一昔前は一世を風靡した時代もあったが、いまではその名前さえも知らない人が多い。二枚の生地の下の生地に模様を施し、モアレ越しに模様が浮かび上がるという繊細な表現はいかにも日本人らしい発想で清涼感と色気を醸し出すきものである。

 

昔のものは秋草を友禅染で描いたものが多かったが、私は水色のぼかし染めに金の摺箔で菊を描いてみた。先日の展示会で別注の無双を2〜3枚お聞きしているので、それを進めながら濃い地色の物も挑戦したいと思っている。

 

いや!物作りは果てしなく楽しいものである。

最高額の逸品

私が制作した過去最高額品の訪問着が思わぬ早さで売約になった。

先般のTV放映「Core Kyoto」ではまだ刺繍の途中であったが、仕上がって2ヶ月もしないのに、あっけないくらい早く売れたのを、有難いと感謝する気持ちと、じっくり眺める機会をなくした残念さで複雑な心境である。その訪問着の制作コンセプトは、限りなく「桃山縫い箔」の実物に迫り当時としても、いかに高価で貴重なものかを、桃山人になったつもりで体験したかった、というのが本音である。

水の取り方の中は、草花を刺繍で埋め尽くし、模様の隙間には純金箔を貼り詰めるというもので、最高の技術をもつ刺繍の職人を約半年間、その一品に掛かり切りにするのは、私にとっても勇気のいる挑戦であり、会社にとっても大きな賭けである。

このような高額品を制作しようと決意するには、出来栄えに50%の自信と50%の不安を胸に、着手することになる。いかに高額なものを作れるかが、物作り人の器を計る目安になると思うと、身が引き締まる。