ぎをん齋藤
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齊藤康二

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京都東山の祇園一角に店を構えて170年余り、
呉服の専門店として自社で制作した独自の
染物・織物をこの弊店で販売しています。
ぎをん齋藤の日常からこだわりの”もの作り”まで、
弊社の魅力を余すことなくお伝えしていきます。
皆様からのお問い合わせ、ご質問などお待ちしております。
◆お問い合わせ
ぎをん齋藤 齊藤康二
TEL:075-561-1207
(Mail) gion.saitokoji0517@gmail.com

七五三参り

上の子が間もなく6歳になる、年月の速さが身に沁みて感じるようになった。

朝晩も冷えはじめ11月には七五三のお参りがあり、三年前の光景がつい先ほどのように思う。

”コロナ”という言葉もそれほど恐怖に感じなくなり、人混みを避けて行動する必要も

なくなった今では、わが子の晴れの姿にわくわくしながら支度をしている方も多いのではないだろうか。

初着を着物や羽織に仕立てなおし、女の子には着物にかわいい被布でんちを着せて髪飾りを付け、

初めての「おべべ姿」を写真に収める楽しみには、私もつい感動し涙ぐんだ記憶がある。

今その時の写真をめくると、子供の成長を祝いまた健康を祈願し、着飾った姿を写真に収め、

神社にお参りすることの意味や大切さが確とわかる。

因みに欧米ではこのような文化、習慣はない。

これは日本特有の文化であり、神々にわが子の御礼とこれからの祈願を兼ねて

参拝するこの習慣は、実に日本人の宗教心の厚さを窺うことができる。

願わくば未来永劫、続いてほしいものである。

 

 

 

 

陳列会の準備中

今週、30日から始まる陳列会がいよいよまじかに迫ってきた。

今日から店内は大掃除と整理整頓、そして季節の建具交換と大忙しである。

まだまだ暑いこの時期、全員汗だくになる。

ある者は拭き掃除をし、若い者は力仕事に精を出す。

そして古参は的確に指示を出し、順序良く理にかなった進め方でみんなをまとめ、

いつものように阿吽の呼吸で全ての作業を全員で手際よくこなしていく。

日々の業務とは異なる、社員全員が一体となり目的に向かって粛々と進めていくのである。

さて、今回は「京縫い」をテーマに皆様をお待ちしております。

まだ日中は気温も高く、暑い日が続きそうですが冷たいお茶菓子や珍しいお土産なども

ご用意してますので、どうぞお気軽にお立ち寄りいただけましたら幸いに存じます。

 

江戸中期の能装束から現代へ

これはある資料から取り出した江戸中期頃の能装束、「松に白鷺文様縫箔」。

縫箔の装束には平織の生地を使い、浅葱地に肩から袖は青海波、腰には網、裾周りには唐花七宝が

金銀の摺箔で施され、上には白鷺、裾には浜松が慶長の名残を想わせる縫いで優美に表現されている。

また、この装束は”前田公爵伝来 第三八一ノ内”と明記された前田家と縁のある銘品の一領でもある。

今回はこの美麗な装束を訪問着として再生している最中でその一部をご紹介したい。

まず縫箔というと桃山から始まり江戸(慶長)まで、縫いと共に発展してきた所謂デザインの一つであり、

この装束もその流れを受け継ぎ、様々な摺箔に緻密な縫いが施されている。

一見単調に思えるデザインだが、上の装束をご覧いただくとおわかりのように摺箔には肩から裾にかけて

金と銀を使い分け絶妙な濃淡で変化をつけ、その色調に合わせて刺繍の色合いもまた変えているのがわかる。

着物というのは上は薄く、裾まわりはしっかりした色のバランスが良いとされているのが

この装束を見て納得いくのではないだろうか。

まだ我々の訪問着は未完成だが、その一部をお見せしよう。

これは剥落させた金銀摺箔に慶長の縫いで白鷺と浜松を表現している。

特徴としてはこの白鷺をご覧いただきたい、慶長特有の色調とデザイン化された形、

私は一目で惚れてしまった。