ぎをん齋藤
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「海北友松」展を観る。

京都国立博物館で開かれている「海北友松展」は地味な作行きが多いせいか、大した混雑はなく、観る側からすれば有難い。

海北友松の絵は一言でいうと「力強さ」である。狩野派に学び、後に宋画、特に「梁楷」の影響を受けたものか、作品の多くは墨一色で描かれ力強く荒削りである。最高傑作は建仁寺本堂に描いた「雲龍」で桃山時代特有の豪胆さにあふれている。

多くの作品の中で私が着目したのは屏風の下地、グラウンドの表現である。

金を巧みに利用し淡い墨と金泥、金箔を併用して絵に奥行きを表現している。この手法が狩野派の影響なのか伝統的な大和絵の手法なのか私には分からないが、少なくとも中国の水墨画には見られない手法であり、私のきもの作りの大いに参考となった。

他にも全体を墨で描き一輪の春草だけを彩色して視線を集める手法や、「貼り付け扇面散らし」は、別に描いた扇面を屏風に貼り付けるなど「ぎをん齋藤」の得意とする「切付け」と共通するのもおもしろい。

作品には秀作、力作、愚作など優劣ができて当たり前だが、友松が晩年に描いた一連の作品は力強さに欠け「手が枯れる」というよりも「気力に欠ける」平凡な作品になったと観た。