ぎをん齋藤
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齊藤康二

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京都東山の祇園一角に店を構えて170年余り、
呉服の専門店として自社で制作した独自の
染物・織物をこの弊店で販売しています。
ぎをん齋藤の日常からこだわりの”もの作り”まで、
弊社の魅力を余すことなくお伝えしていきます。
皆様からのお問い合わせ、ご質問などお待ちしております。
◆お問い合わせ
ぎをん齋藤 齊藤康二
TEL:075-561-1207
(Mail) gion.saitokoji0517@gmail.com

更紗切付け織名古屋帯 制作中

切付け(きりつけ)とはご存じだろうか。

「切りばめ」のほうが一般的だろうか、主に古裂の一部を切り抜き、別の生地に貼り合わせて

文様を構成する技法で古くは室町中期から始まり、渡来した高価な布地を切り取り、小袖や胴服などに

貼り合わせ、効果的に日常使用されてきた技術である。

その技法を使い、古渡更紗を用いて切付けの織名古屋帯を現在制作している。

今回は白生地を一から染めて柄を付けるのではなく、そもそも高価で価値のある古裂を切り刻んで柄に転用する

というなんとも贅沢な織帯、使用する古裂の主役は「古渡更紗 笹蔓手金更紗」(ささつるできんさらさ)

という17世紀インド更紗の中でも有名な代物、字のごとく笹蔓には厚みのある本金がふんだんに使われ、

細工も細かく、色鮮やかな色彩は当時の茶人などの嗜好に合った日本人好みの金更紗であり、

それを惜しげもなくタイコ、ハラに使用するのである、

贅沢の極みといっていい。

途中経過の古渡金更紗切付け笹蔓手織名古屋帯

 

17世紀の古渡というだけあってところどこと金は剥げ落ちているが、

時代と共に流れた時間の厚みや長さを考えると、そのオリジナルの

価値や魅力は大変貴重なものとなり、それが人を引きつける。

今では滅多に出てこないインド17世紀の古渡金更紗、当然簡単に手に入るものではない、

今回も先代が蒐集した古渡以外にあった程度の良いものをかき集め、丁寧に洗浄し程よくなった

ものを使用し織帯の主役として堂々と切付けしているのである。

もちろんその他の更紗もそれぞれある程度劣化はしているが、切付けに耐えうる状態のいいもの、

時代背景や原産地も同じものばかりを集めて慎重に切付けしている。

これからもう一息、いいものが出来上がることは間違いないと確信している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤は赤でも、、、

赤い帯は好きですか?

近年特に感じるのは御所解帯に限らず、赤の色を求める方が多くなったと思う。

以前は赤色といえば”ド派手”、とあまり好まれない色目の代表的なものだったので、

当時私自身もあえて赤い帯を勧めるようなことは絶対しなかった覚えがあるくらい避けていた色である。

ではこの変化は時代の流れだろうか、または着物に対する色の概念が変わってきたのか、単に流行りか、、、

以前から、私個人的には赤は大好きな色の一つで、何より魅力的な色、人をひきつける力があり、

いろいろな着物にも合わせやすく、おしゃれにはうってつけのアイテムだと思っている。

そんな魅了的な色ではあるが、赤は赤でも我々の出す色はいわゆる絵具の赤ではない。

それは真紅に近い赤で、特に御所解染帯はその柄行に合わせて深みを加えている。

以前に色の話をしたが、色とは無限のものでありどの色調がベストか、など半永久的にわかるはずがない。

毎度悩みながら何回も試してベストと思える色調になるよう心掛けて選択している難しい作業である。

面白い話があり、ヨーロッパ地域の人とその他国籍のバラバラな人たちが赤色を何色絵具で作れるか

試してみたことがあった、結果ヨーロッパは15色、その他は5色前後だったそうである。

では何が違うのか?一つの答えは生まれた国の気候が色素の区別においてかなり

影響力がある、ということだそうである。

わかりやすく言うと季節の移り変わりではなく、日光の直接光と反射光がそれぞれの気候によって

違うため、色の見え方やとらえ方も大きく違ってくるそうなのである。

それくらい色とは微妙で繊細なものなので、そう簡単にベストな答えが見つかるわけがない。

さて、話を戻すと我々が染出す赤も細かい話をすると毎回微妙にその色調は違う、

これは当たり前のことで、人が手作業で色を配合し染めてその時の気候変動によって色の

浸透率や発色が変わってくるから違うのは当たり前のことである。

それがまたその色目のうまみであり、魅力といっていい。

機械できまった配合で量産できるものではなく、その一点一点に特徴があり、

その色に惹かれてものに出会うきっかけとなる、と私は思う。

では貴方はどんな赤が好きですか?

 

 

 

 

御所解染帯復刻版 追加情報

さて、また御所解染名古屋帯の追加情報!

今回はこの復刻版の刺繍について。

御所解染帯の制作過程において一番慎重に進めていくが「刺繍」。

理由としてはやはりコストの割合が大きく、それゆえ柄全体のバランスを保ちながら

地色に合わせた色の配色をし、限られた数を配置することが求められるからである。

色と数の制限とバランス、センスの問われる難しい工程である。

その御所解染帯の主役である刺繍、今回は「京縫」をご紹介したい。

「京縫(きょうぬい)」とは飛鳥時代の仏画縫いからともいわれており、平安時代には縫部司(ぬいべのつかさ)

として都に置かれ、貴族の衣装や武具の装飾に用いられていたのが京縫の始まりと言われている。

そして現在の形となったのは美術革命が起こった16世紀、安土・桃山時代から主に小袖や装飾品などに

その技法が用いられ、需要と共にさらにそれが質の向上へとつながり、現在縫い方は15種以上となる

貴重な伝統技術であり、言い換えれば日本が誇る伝統的な文化遺産でもある。

話を戻すと、我々の御所解染帯はその京縫の約二種類以上を使って刺繍を表現している。

一見するとその識別は難しいが、すが縫い、こま縫い、まつい縫いなど、その箇所に適した

様々な伝統技法を使いこなしてようやくその魅力が発揮されるのである。

数多くの伝統技術で成り立つぎをん齋藤の御所解染帯、ぜひ手に取って良く眺めていただきたい。